おおたみんなの家

おおたみんなの家の園長ブログ

終戦記念日に寄せて

炎暑がつづいていますがお元気にお過ごしでしょうか。熱中症や冷房と気温差による夏風邪など、体調管理には十分気をつけてお過ごしください。

 

 さて、8月15日は69回目の終戦記念日。私たちは我が国の歴史事実として、「戦争」について振り返ることができる日です。少し長くなりますが、最後までお読みいただきたいと思います。

 

 私たちは「戦争を体験していない世代」ですから、体験したことも目の当たりにしたこともない「戦争」の話を聴き、映像を見ても、なかなか自分事として捉えることが難しいのかもしれません。

 しかし、戦争体験者が減っていき、戦争体験や記憶が風化していく中で、言葉では言い尽くせないほどに悲惨で壮絶な戦争の記憶を子どもたち伝え、二度と戦争という暴力が繰り返されないように教育をおこなうことは、私たち親に委ねられた重い責任のひとつだと思います。

 日本にいると見過ごしてしまいがちですが、終戦から68年間、私たちは平和だったのではなく、今も世界で戦争や紛争は続いています。以下に現在も続いている戦争や紛争を挙げてみました。

1948年 - (継続)パレスチナ紛争(イスラエルパレスチナ武装勢力

1950年 - (継続)チベット紛争(中国)

1971年 - (継続)カシミール紛争(インド ・パキスタン

1992年 - (継続)アルジェリア紛争

2001年 - (継続)アフガニスタン侵攻(対テロ戦争

2003年 - (継続)イラク戦争

2004年 - (継続)タイ紛争

2011年 - (継続)リビア戦争(アラブの春

2014年 - (継続)ウクライナ内紛(マレーシア航空機誤爆

    (継続)イラク内紛(アメリカ軍空爆

 私たち親は、今でも世界中で悲しみが生まれている現実を知り、我が子がもしも戦争に巻き込まれることになったら・・・などと想像してみましょう。そして、子どもたちと共に戦争の悲しみや愚かさを語り合いましょう。親がそういう話しを聞かせてくれることが、何よりの反戦教育になります。

 しかし、体験の無い私たちが子どもに戦争について伝えるのは難しいものです。怖がらせたりショックを与えたりするのは好ましくありません。そこで、絵本を紹介したいと思います。

 まずかわいそうなぞう(土家由岐雄/作)です。

 内容は、第二次世界大戦が激しくなり、東京・上野動物園では空襲で檻が破壊されて猛獣が街に逃げ出したら大変だということで、猛獣や動物たちを毒殺することを決定します。ライオンや熊が殺され、残すはゾウのジョン、トンキー、ワンリーだけになります。象に毒の入った餌何度も与えますが、ゾウたちは餌を食べようとはしません。毒を注射しようにも針が折れて注射が出来ないため、仕方なく、エサや水を与えるのをやめ餓死するのを待つことにします。そんなある日、ゾウの飼育員が檻の前を通りかかると、トンキーとワンリーが痩せ細った体をおこして、ひょろひょろと飼育係の前に進み出てきました。互いにぐったりと体を背中でもたれ合いながらも、芸をして見せはじめたのです。後ろ足で立ち上がり、前足を上げて折り曲げました。痩せ細った体じゅうの力を振り絞って必死に。芸をすればもとのようにエサがもらえると思ったのでしょう・・・というストーリーです。

 もう一冊は「猫は生きている」早乙女勝元/作)です。

 これは大空襲でほとんどの人間は死に、その中で逞しく生きて行こうとする猫たちの物語ですが、焼夷弾で辺り一面火の海になり逃げ場がない中で、爪がはがれても地面を掘って、赤ちゃんを守ろうとして息絶えてしまう人間の母親が描かれています。

 これまでも、この2冊は終戦記念日などによく保育園の子どもたちに読んで聞かせていたのですが、声を出して読むとこみ上げてくるものがあります。読み聞かせているときに声を詰まらせ目を潤ませた私に、子どもたちがびっくりして、みんな私の顔をじっと見ていたこともありました。

 そのときに、子どもたちには「なぜ涙が出そうになったのか」を必ず語ります。絵本に出て来る登場人物になぞらえて、子どもに「もし、〇〇くんがこの飼育員さんだったら、ゾウに毒を飲ませて殺すなんてできるかい?」とか「もし、このお母さんがママで赤ちゃんが〇〇ちゃんだったら、ママもこうやって守ろうとするよ」などと、信頼できる大人が涙を浮かべながら語ったことは、幼い子どもでもしっかり心に刻んでくれるようです。

 私たち親が、まだ幼い子どもに戦争について伝えるとき、その戦争の原因や経緯、日本の戦争責任や近隣諸国の反応などを伝える必要はなく、衝撃的な戦中の写真などを見せる必要もないと思います。ただひとつ『戦争とはたくさんの愛すべき人の命を失うものであり、深い悲しみに打ちひしがれること』という事実だけを伝えればよいと思います。ぜひ、一年に一度だけでも、戦争という深い悲しみについて親子で語り合ってみてください。

 戦争の失われた多くの尊い命への供養と、世界中の子どもたちが戦火の犠牲にならないことを夏の夜空に祈りながら。